KAMOME PJ 実施報告

■2023年度
 12年間のKAMOME Project活動を終え、KAMOMEの耐熱素材研究を一歩進め、実際に低熱抵抗、低電気抵抗のモジュールを作成し、そのモジュールをEV用モーターの中に入れて、動かすところまでを視野に入れるという、材料メーカー、モジュール/デバイスメーカー、自動車メーカーの関心領域をカバーするプロジェクトとして、新たにEXPLORE-PJして生まれ変わります。

■2022年度
 本プロジェクトは、高温動作パワーモジュール用実装材料開発を目指して大学・企業・公的機関が連携して進めるプロジェクトで、過去KAMOME PJ Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ(各2年間計6年間)及びKAMOME Advanced Project(3年間)活動を行い、本年度は封止材料、接合材料及び基板材料がTjmax225℃に確実に耐え、最終的にTjmax250℃にも耐える各改良材料の信頼性評価行うため信頼性評価パッケージとモジュール構造を見直して活動する3年間のKAMOME Advanced Project PhaseⅡの最終年となりました。 最終年のPJ参加企業は2年目より1社減り、接合材ナミックス(株)、封止材は信越化学工業(株)とパナソニック(株)インダストリー社、及び基板は三菱ケミカル(株)の4社となりました。 最終年のPJ参加企業は2年目より1社減り4社となりました。
  Advanced Projectでは、ショットキーバリアーダイオード(SBD)と基板のAl Wire によるBonding方式を採用しましたが、PCT途中でWire断線やBonding部のLift off不良が発生し、実装材料の信頼性評価を十分行う事が出来ませんでした。 この結果を受け、Bondingではなく凹型のクリップを用いて両端をSBD及び基板に接合材にて接合する構造が良いのではと考え、クリップの形状及び材質(熱膨張係数)を変えた応力シミュレーション結果にて最適形状及び材質を決めてモジュールに適用した1及び2年目のA-PJ PhaseⅡPJ結果は、クリップ両端接合部に破断や亀裂が生じず、PJ3年目のモジュールも同様の構造を採用しました。 
 信頼性評価のPCT及びTCTを行う片面放熱モジュール24個の組み立ては、シーマ電子(株)にて2023年1月半ばに完了し、その後KISTECにて初期熱抵抗測定及びSAT観察を行った後PCT及びTCTの信頼性試験評価に入り4月末までに全て終了する予定でしたが、TCT評価が遅延し5月末に終了することとなりました。
 評価する封止樹脂は、2年目に作製したモジュールのPCT/TCT前SAT観察で、樹脂による基板及びLF封止部に剥離及びモジュール全体で樹脂充填不足やVoidの発生が見られ、樹脂メーカー2社が改良した樹脂をシーマ電子(株)にて簡易モジュールを用いて封止状態をSATで観察を行ない、問題のない樹脂である事を事前確認したものを3年目評価に用いました。 接合材は、A社の加圧及び無加圧Agシンター材の評価ですが、Refとして2年目の評価でPCTの成績の良かった加圧/無加圧Agシンター材を使用しました。 基板は、Refであるセラミック基板がPJ資金不足で不使用とし、B社の金属基板のみ使用する事で参加企業の同意を得ました。
 封止材は、2社の内1社は確実にPCT250℃2万サイクルを達成し、他1社はRef接合材との組合せで一部2万サイクル未達の結果となり、不良解析はそのメーカーに依頼中で結果は2022年度中に出ませんでした。 接合材は、Ref接合材に比べて性能が良く、十分Tjmax250℃に耐えられる結果となりました。
 金属基板に関しては、セラミック基板に劣らない性能を発揮しましたが、封止材の金属基板との高温における密着強度劣化が有る場合Tjmax250℃に耐えることは出来ませんでした。
 高温における密着強度が優れている封止材を用いれば、セラミック基板に替わる基板として使用可能であるとの結果を得ました。
 B社の金属基板(IMB)をマイクロモジュールテクノロジー(株)(MMT)製の両面冷却モジュールで評価する契約を両社が取交わし、その評価をサポートする事もPJ活動に取り込みました。
 モジュールは、SiC SBDチップの他MOSFETダミー材やGapを維持するSpacerの各上下を接合材にて上基板及び下基板に接合する構造で組立が難しく、接合時に用いる治具の改良、モジュール組み立て、ステップ毎の信頼性チェック等行ったため、最終8個のPCT/TCT評価用モジュール完成が計画より遅延し年度内に結果を出すことは出来ませんでしたが、継続して信頼性評価を行っています。
 一方、モジュールを使用しない要素評価を接合材で実施し、3か月間の200℃炉内投入によるエレクトロマイグレーションテストの結果抵抗の変化は無く、安定した材料であることが分かりました。
 2023年5月末にKAMOME Advanced Project PhaseⅡを終了して、12年間のKAMOME Project活動を終えます。  PJは、PCT 2万サイクル(1サイクル:65℃18秒/250℃2秒)以上を達成する封止材、接合材及び基板かどうかを評価するもので、PJ活動の中で行った種々の信頼性テスト結果を基にPJ参加企業が開発を行い、目標を達成する各材料が開発されました。PJ活動は紆余曲折が有りましたが、最終的に無事その使命を終えることができ、PJに携わった方々に感謝いたします。


■2021年度
 KAMOME A-PJ PhaseⅡ

 本プロジェクトは高温動作パワーモジュール用実装材料開発を目指して大学・企業・公的機関が連携して評価、開発を進めるプロジェクトですが、本年度は最初から数えて11 年目、Tjmax250℃に耐える素材を目指して更なる改良を加えて信頼性評価パッケージとモジュール構造を見直したAdvancedProject PhaseⅡ開始から2 年目となりました。
 kAMOME-PJ は、パワーエレクトロニクスの実装材料である封止材料、接合材料及び放熱材料がTjmax225℃に確実に耐え、Tjmax250℃にも耐える材料である事を証明することを目標にしています。
 Advanced Project PhaseⅡでは、それまでのAl Wire Bonding に代えてクリップを用いた片面放熱モジュールを用い、すでに1 年目には65℃/225℃の PCT で、5 万サイクルに達する評価試料が多く出るという好結果を得ることが出来、2 年目となった本年度は、1 年目で得られたモジュール組立時の問題点を対策し、PJ の最終目標である65℃/250℃ PCT2 万サイクル達成を目標に計画を立てました。
 その結果として、片面放熱モジュール組立は、接合が3 回と複雑であるために予定通り進まず、本年度は試作等の協力企業であるシーマ電子(株)に接合から樹脂封止まで全ての工程を行ってもらいましたが、計画は遅延し、2022 年7 月までに終了することとしました。
 2022 年度は課題が生じた実装材料及びモジュール構造に改良を加え評価をおこないます。目標に達しなかったモジュールの不良解析は重要で、断面観察を確実に実行していきます。
一方、モジュールを使用しない要素評価も行いました。接合材料は接合工程3 回通過後も物性変化は起こらず、3か月間の150℃炉内投入によるエレクトロマイグレーションテストの結果でも抵抗の変化は無く、安定した材料であることが分かりました。また、封止無しPCT 用試料での65℃/250℃ テストの結果、多くの試料が2 万サイクルを達成しました。
 封止材料は250℃x500Hr とした場合に接着力が大幅に落ちるものが出てくるという課題を残しています。
 本年度は、封止材料では新規参加が有りましたが、参加企業の入れ替わりで1 年目より参加企業が1 社減り、1 年目と同じPJ 活動を行える資金が無く、同研究費や事務局費を大幅に削減してPJ 活動を継続せざるを得なくなりましたが、PJ 活動への寄付の申し出が有ったこと、且つPJ リーダーである羽深先生の研究室で研究活動の一部を引き受けていただいたことから、何とか必要最低限の活動を行うことが出来ました。
 PJ 活動を活性化させるためにはPJ 参加企業を増やす必要が有り、KAMOME の活動成果をパワエレに関連する学会に積極的に発表し、且つ旧PJ 会員企業へも情報として再度流すことによって、PJ 参加企業増を図りより活性化した活動を進めて行きたいと考えます。


■2020年度
 KAMOME A-PJ PhaseⅡ

 3 年間活動したKAMOME A-PJ 終了後、KAMOME A-PJ PhaseⅡとして2020 年4 月のPJ スタートを目指し、1月より会員企業募集活動を開始しました。しかし、PJ 活動に必要な最少12社が集まらず9 社に止まり、4 月からのスタートを延期し募集活動を継続しました。コロナ禍もあり参加企業は増えず、逆に参加を表明していた企業の中に事業見直しや資金面から不参加に変わった企業が生じ、最終的にPhaseⅡ参加の新規企業は1 社に止まりました。継続参加した企業は、接合材料WG(Working Group)に参加していた2社、封止材料WG に参加していた2社及び放熱材料WGに参加していた1社の5 社で、PJ 全体は新規企業と合わせ計6 社となりました。従って、今までのPJ で進めてきた基本特性評価及びパワーモジュールで評価する封止材料、接合材料、放熱材料の各WG 活動は参加企業が少ないため実行不可能となり、共同研究費、事務局費、試作費を関係者のご協力をいただいて大幅に削減し、PJ 参加企業の封止材料、接合材料、導電性金属基板を使用したTjmax250℃を達成可能な片面放熱パワーモジュールの信頼性評価に焦点を絞ってPJ を進める事にしました。
 PJ のキックオフは、6 月30 日(火)にA-PJ 活動最終報告会終了後行い、7 月28 日(火)ZOOM システムを使用したWEB 会議形式でPJ の進め方に関して意見交換会をおこないました。その結果、信頼性評価試験用モジュール試作⇒信頼性評価⇒不良解析⇒改良材開発⇒モジュール試作⇒ のサイクルで進めていく事で了解を得、PJ がスタートしました。TCT(Thermal Cycle Test)及びPCT(Power Cycle Test)を行う片面放熱パワーモジュールは、SiC チップとリードフレームの接続にAl Wire Bonding を用いずクリップを用いる方式を採用しました。クリップ接合部のミーゼス応力が接合材の接合強度より大きくなれば剥離が生じるため、幾通りかのクリップ゚形状及び材質にて(株)ASTOM にミーゼス応力シミュレーションを行ってもらい、その結果から35Cu-65Mo 材料を用いた凹型のクリップ形状に決まりました。 マスタースケジュールでは、2020 年12 月末片面放熱パワーモジュールが完成する計画でしたが、作製に時間を要する部材が多く入手に時間がかかり、正月明けにパワーモジュールの組立を行う接合材メーカーに部材が送付されました。 信頼性評価を行う片面放熱モジュールは、従来とは異なり接合を3 回繰り返すめ、接合材メーカーは接合条件出しに時間がかかり最終的に接合が完了したのは2 月初めでした。その後シーマ電子(株)にて樹脂封止、ワイヤーボンディングカット、電気特性チェックを終えたモジュールが3 月中旬KISTEC に送付されました。 KISTEC での初期のSAT 観察及び熱抵抗測定結果は3 月31 日に出ましたが、熱抵抗測定不可のものが有り且つSAT 観察では全ての接合箇所で接合が完全に行われていると判断されるモジュールはありませんでした。 次年度に入り、信頼性評価部材を供したメーカーに熱抵抗測定可能なモジュールからTCT 用及びPCT 用を選択してもらい、PCT(1 サイクル65℃(18S)/225℃(2S)で不良発生後or 5 万サイクル後)及びTCT(1 サイクル-40℃/225℃各30 分保持 100 サイクル後、300 サイクル後、500 サイクル後)のSAT 観察及び熱抵抗測定を行います。コロナ禍の影響もありますが、PJ 活動のスタートが遅れ且つ信頼性評価を行う新しい構造の片面放熱モジュール作製に時間がかかったことは、反省すべき点として残りました。

■2019年度
 KAMOME A-PJ

 本 PJ は3年間の PJ で、 2019 年度が最終年度となりました。この3年間を振り返ると、 2017 年度は、アイシン 精機 (株) 、 (株) ADEKA 、 オムロン (株) 、日本合成化工 (株) 、XTG ホールディングス (株) 、積水化学工業 (株) 、デンカ (株) 、千住金属工業 (株) 、 (株) 日本 スペリア 社、ヘンケルジャパン (株) 、東レ (株) 、宇部興産 (株) 、協立化学産業 (株) 、セントラル硝子 (株) 、DIC (株) の計 15 社で、2018 年度は、アイシン精機 (株) 、 (株) ADEKA、オムロン (株) 、日本合成化工 (株) 、JXTG ホールディングス (株) 、積水化学工業 (株) 、デンカ (株) 、千住金属工業 (株) 、 (株) 日本 スペリア 社、ヘンケルジャパン(株)、東レ(株)に 信越化学 (株) 、 ナミックス (株) 、日立化成 (株) 、三菱 ケミカル (株) 、 三菱 マテリアル (株) の計 16 社で、 2019 年度は前年の 16 社に日立金属 (株) を加えて 17 社で 活動を 行いました。
 材料ごとに分科会(ワーキンググループ WG )を構成し、 2 ヶ月ごとに得られた結果の報告と結果に対する議論を行う WG 会議を開催し、競合企業が同じ テーブル で技術開発に取り組む オープンイノベーションは 実現 できました。
 また、PJ 会員企業、 PJ 運営委員、試作等協力企業とパワエレ関連のエンドユーザー企業に所属の専門的知識を有する方々がアドバイザーとして出席する全体会議を WG 会議の間2ヶ月ごとに開催し、アドバイザーより各WGで得られた結果及び評価の進め方に関する適切な助言をいただき、 PJ 活動に活力を与えました。
 このPJ の活動では、会員 企業 が、 封止材料(樹脂)、接合材料(銀 ナノ 、銅 ナノ 等)、放熱材料( セラミック 基板、伝熱 シート 等) といったパワーモジュール構成材料を用意します。 開発材料毎に基礎的な材料特性評価を行い、 H ST Heat Stress Test )、 TCT Thermal Cycle Test )や PCT PowerCycle Test )にて熱的負荷をかけた後の SAT Scanning AcousticTomograph y 超音波探傷検査) 観察や熱抵抗測定及び断面観察等 を行います。 さらに 得られた結果 と熱分布及びミーゼス応力シミュレーション結果とを照らし合わせ、 信頼性向上に効果のある材料特性因子を推察し て 各材料開発の方向性を 見出します。 最終的には、優れた信頼性評価結果を得た各材料を用い、信頼性評価 用プラットフォ ーム にて作製した パワーモジュールで 動作試験 を行い 総合力評価 を行いますが、昨年度の 2018 年度はプラットフォームと考えた評価モジュール自体に課題があることが分かり、解決に向け種々検討を行いました。 2019 年度は、最終的に信頼性評価プラットフォームとして実用に耐えうるものと考えたモジュールを使用して、各材料の信頼性評価を行いました。 結果としては、封止材料評価用モジュール等で信頼性評価を下す前にモジュールを構成している他の部分が損傷してテスト継続不可となる事態が発生し、更なる改良が必要との残念な結果になりまし た。 接合材料 WGでは、単純な構造の評価試料を用いる事にて、参加企業間の材料優劣判定を行う事が出来ました。 伝熱シート熱シートWGWGでは、モジュール組立の接合時の高温に耐えることが出来ず剥離を起こした物があり、モでは、モジュール組立の接合時の高温に耐えることが出来ず剥離を起こした物があり、モジュール評価を見直す必要があるとの結果になりました。ジュール評価を見直す必要があるとの結果になりました。 セラミック基板評価の両面冷却モジュールセラミック基板評価の両面冷却モジュールは、多くの課題を克服してようやく評価できるものが出来上がりましたが、信頼性評価途中では、多くの課題を克服してようやく評価できるものが出来上がりましたが、信頼性評価途中でPJPJの期の期限を迎えてしまいました。限を迎えてしまいました。 PJPJ最終年度の最終年度の20192019年度、年度、PJPJが目指したゴールに辿り着くことが出来ず、が目指したゴールに辿り着くことが出来ず、PJPJ継続すべく新規内容も盛り継続すべく新規内容も盛り込んだ提案で次期込んだ提案で次期PJPJの募集を行っています。の募集を行っています。